天台宗の葬儀
カテゴリ:宗派の解説と葬儀の違い
更新日時:2021年06月09日 18:40
天台宗は、平安時代に端を発する、とても歴史の古い宗教です。天台宗を開いたのは最澄。総本山はかの有名な比叡山延暦寺です。この記事では、法華経を経典とする天台宗の葬儀についてご紹介していきます。
天台宗の考え方
天台宗では、法華経を唱えて懺悔します。天台宗の考え方では、人は仏様の子供であり、すべての人が仏性を持っているので、法華経を唱えて懺悔することで、悟りにつながるのです。「一隅を照らす者、これ、国の宝なり」。これは最澄の言葉です。一隅は、誰もが気づかないほどの場所、一角のことであり、それは誰もが目を背けているということなのかもしれません。このような一隅を直視し、変化を与えられる人間が集まればよい世界になる…このテーマが天台宗の中心にあります。
葬儀の流れ
天台宗の葬儀は、「顕教法要」「例時作法」「密教法要」が柱となります。
顕教法要は、法華経を唱えて懺悔することです。例時作法は、極楽に行くために祈ること。そして密教法要は、仏様のお言葉である「真言」で、故人が極楽に行けるよう「印し」を作って弔うことです。
天台宗のお通夜では、読経と「剃度式(ていどしき)」がおこなわれます。剃度式は、本来は髪の毛を剃り、お浄めをおこなうのですが、現在は形式的にかみそりを当てるだけです。
翌日の葬儀では「列讃(れっさん)」という故人の成仏を祈る式がおこなわれます。音楽と打楽器の音が響く中、故人が阿弥陀如来に迎えられて成仏することを祈ります。
天台宗で特徴的なのが、お茶を供える儀式です。これは「奠湯(てんとう)」や「奠茶(てんちゃ)」と呼ばれます。
その後、導師により引導が渡されると、弔辞や読経のあとに、回向文(えこうもん)が唱えられ、葬儀は終了となります。
焼香の作法
天台宗では、焼香は3回が基本です。合掌礼拝ののち、右手の親指、人差し指、中指で香をとり、左手を添えた状態で額まで持ってゆき、焼香します。この動作を繰り返したのち、合掌拝礼をおこない、席へと戻ります。線香の場合は1本、もしくは3本立てます。
天台宗は、特徴的な数珠を使うことでも知られています。よく見かける丸い珠ではなく、扁平した楕円の珠が連なる数珠を使用します。108の珠の中には親玉がひとつ、点玉が4つあり、親玉から伸びるひもには弟子玉があります。礼拝の際は、この弟子玉部分を垂らし、数珠の本体は親指と人差し指の間に掛けます。
天台宗の葬儀も、ほかの宗教同様に地域差があります。